イラスト・美術の著作権はどこまでOK?──東美生のための著作権講座レポート【弁護士監修】

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7月21日、在校生を対象とした「著作権講座」を開催しました。「自分の作品、これってパクリになる?」「ネットで見つけた画像を参考にしていい?」「生成AIとどう付き合えば?」──美術を学ぶ学生が普段から抱えるリアルな疑問に、弁護士の先生が答える充実の内容となりました。

登壇者:木村剛大先生

この記事では、当日の講義と質疑応答の要点を、制作にすぐ活かせる形でまとめます。手を動かして学べる「著作権とフォントのきほん」(無料・○×ゲーム)もあわせてどうぞ。

講座の構成

  • 第一部:著作権の基本講義
  • 第二部:事前アンケートを基にした質疑応答・座談会

著作物の利用について考える3つのステップ

ある利用が著作権的にOKかは、次の順で考えます。

  • ①著作物にあたるか?
  • ②著作権の範囲の利用か?(形式的な判断:複製・翻案など、どの権利に当てはまるか)
  • ③利用できる場合(権利制限規定)にあたるか?(実質的な判断:何のために・どのような場面で・どう使うか)

著作権と著作者人格権のちがい

  • 著作権:経済的利益を守る権利。譲渡できる。「①著作物のコピーを作る権利(複製・翻案)」「②著作物へのアクセスを可能にする権利(公衆送信・展示・上映・譲渡・貸与など)」の“束”。
  • 著作者人格権:人格的利益を守る権利。譲渡できない(公表権・氏名表示権・同一性保持権など)。

侵害するとどうなる?

侵害が認められると、差止め(やめろ)損害賠償(金払え)の対象になります。日本では懲罰目的の賠償は認められず(補填が原則)、弁護士費用は原則として自己負担ですが、判決で認められた損害額の一部(10%程度)が別途認められることもあります。

「似ている/似ていない」の境界線

  • 著作権法上の「類似」の範囲は、思うほど広くありません。また、偶然似ただけなら「依拠」がなく、侵害になりません。
  • ポイントは「アイデア」か「表現」か。モチーフやテーマ(アイデア)が共通するだけでは侵害にならず、具体的な個性が表れた“表現”が共通するかが判断の分かれ目です。
  • 写真はリスクが高い:写真を元に絵を描く場合、写真は基本的に著作物として扱われるため、権利侵害のリスクが高くなります。

「パクリ」と言われないための制作ガイド

参考資料を使うときは、最低3つ以上のソースを参照するのが鉄則です。

  • 複数の資料を集め、モチーフの共通点を探す
  • 変更できる箇所(自分のオリジナリティを出す部分)を考える
  • 複数の資料を掛け合わせ、トレースせずに新しく描く

参考にした資料の著作権者を分散させておくこと(特定の著作権者の著作物だけを参考にしないこと)、また、制作過程(ラフやメイキング)を記録しておくことも大切です。作品を仕事にする段階の権利の扱いは、フリーランスイラストレーターの仕事の取り方ストックイラスト講座もご参考にしてください。絵やデザインの仕事の全体像(なるには・向いてる人・学校選び)は、進路ガイドでも整理しています。

侵害リスクの度合い

  • リスク高:取込型(原作品をそのまま使う)/形式変更型(写真→イラスト、写真→彫刻など形を変える)
  • リスク低:要素抽出型(具体的な表現ではなく、要素や構成だけを取り出す。原作品を想起させるだけで侵害になるわけではない。)

SNSでの発言に注意

SNSで「これはパクリだ」「コピー商品だ」と公に投稿・拡散する行為は、かえって自分が法的責任(名誉毀損・不正競争防止法違反など)を問われることがあります。主張があるなら拡散せず、まずは当事者に直接連絡しましょう。

生成AIと著作権

文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)などをふまえた要点です。

  • 学習:著作権法30条の4の情報解析に当たり、適法とされています。もっとも、特定の作品に似た生成物を生成する目的での学習(意図的な追加学習など)は、この規定が適用されず、侵害になり得ます。
  • AI生成物は著作物か:プロンプトを入力しただけの生成物は、著作物と認められにくいとされています(米国でも基本的には同様の考え方)。
  • 認められやすくする工夫:①自分で描いたラフをもとにAIを使う/②AIで生成した生成物に自ら手を加える/どのようなプロセスで作品を制作したかを記録しておく。

質疑応答(Q&A)

Q. 二次創作のイラストをSNSにあげるとき、気をつけることは?
A. 公式からガイドラインが出ている場合は、それに沿った表現・発言をすることが大切です。

Q. SNSに投稿したイラストがAIに学習されないか不安です。
A. データにノイズを入れるなどの技術的な対策はありますが、それだけで完全に防ぐのは難しいのが現状です。

Q. 作者が不明(不詳)の作品や写真は使えますか?
A. 著作権者が分からない場合でも、文化庁の裁定制度(所定の手続きと補償金相当額の支払いにより利用できる仕組み)を使えば、合法的に利用できる道があります。

困ったら専門家に相談を

芸術活動の著作権やトラブルは、一人で抱えず専門家に相談を。文化庁「文化芸術活動に関する法律相談窓口」では、弁護士に無料で相談できます(2022年度開始)。
文化庁 法律相談窓口

おすすめ参考文献

  • 福井健策『18歳の著作権入門』(ちくまプリマー新書、2015)
  • 池村聡『はじめての著作権法〔第2版〕』(日経文庫、2026)
  • 岡本薫『小中学生のための初めて学ぶ著作権〔新装改訂版〕』(朝日学生新聞社、2019)
  • 大串肇=北村崇=木村剛大他『クリエイターのための権利の本〔改訂版〕』(ボーンデジタル、2023)
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