保存科学とは──「事実を共有する」ための調査と分析

シャーレを用いた保存科学の実験 授業紹介

保存科学は、文化財保存の自然科学的なアプローチを担います。難しそうに感じるかもしれませんが、その中身は「誰にとっても分かりやすい事実」を探すための方法論です。東洋美術学校の保存修復科では、この保存科学を修復の実技と並ぶもう一つの柱として学んでいきます。

なぜ、数字や画像で表すのか

人の手や感覚は優れていますが、感じたことをそのまま他の人と分かち合うのは簡単ではありません。

ある人が感じている状態を、数字やグラフ、画像などで表現できれば、他の人と事実を共有できます。目の前の事実に客観性が生まれ、論理的な考察へと進みます。素材の劣化状態の理解、劣化を遅らせる処置方法、そのために必要な材料の選択という形で、その考察が資料の保存計画に生かされていきます。修復と保存科学は、いわば「車の両輪」の関係にあります。

化学式が書かれた保存科学のホワイトボード

修復を「回避する」という考え方

保存科学は、処置そのものだけでなく、処置を避けるための知見も扱います。

2年次の「予防保存学」や「IPM(総合的有害生物管理)実習」では、修復処置が必要になる前に行うべき手立てを学びます。修復処置は最終手段であり、資料の劣化要因を減らし、保存環境を整えることで、そもそも処置を避けられる場合があります。守るべきものに手を加えずに守る。この予防という視点も、保存科学の大切な一面です。

ビーカーを使った保存科学の実験

いつ学ぶのか──1年から4年まで貫く柱

保存科学は、1年次から4年次まで、学びの土台として続いていきます。

1年次の「基礎科学」では、文化遺産を構成する材料の基礎知識や、化学・物理・生物といった自然科学の理解を目標とします。講義が中心ですが、文化遺産保存の現場見学や実習も行います。2年次では「保存科学」「予防保存学」「IPM実習」「光学調査」へと広がり、3年次の「科学分析診断法」、4年次の「保存科学課題研究」や「紙文化財の保存科学研究」へと深まっていきます。目に見えない世界で起こっている現象を捉えようとする姿勢を、学年を追って養います。

色見本を用いた調査作業
パレットの上で絵具を扱う手元

保存修復科で学べること

保存科学は、東洋美術学校 保存修復科の学びを支える柱の一つです。

保存修復科では4年間をかけて、油彩画・木製品・日本画・染織品・文書など複数分野の修復と、それを支える保存科学を実践的に学びます。各分野の学びは、保存修復科の学科ページで紹介しています。カリキュラムや進路の方向性は、資料請求でより詳しく確認できます。

あわせて読みたい

タイトルとURLをコピーしました
資料請求 オープンキャンパス