マンガ原画をどう遺すか──「大量にあるもの」を保存する

色鮮やかな資料を前に指導を受ける様子 授業紹介

日本には、少なくとも5000万枚以上のマンガ原画があると推算されています。少し前まで産業廃棄物のような扱いを受けていた原画に、いま国内外の原画展などを通じて注目が集まっています。東洋美術学校の保存修復科には、この原画の保存に正面から取り組む「マンガ原画保存」という授業があります。

希少な美術品とは違う、大量にあるものの保存

マンガ原画の保存は、一点ものの美術品を守る保存修復とは前提が異なります。

希少性の高い美術品では、その一点を長い時間をかけて守り抜きます。一方でマンガ原画は数が桁違いに多く、保存の方法論もまだ定まっていません。大量にあるものを遺していくためには、希少な美術品とは別のアプローチを探す必要があるのかもしれません。保存修復の対象が広がっていくなかで生まれた、新しい問いです。

ピンセットで資料の細部を扱う手元

いつ、どう学ぶのか──2年次「マンガ原画保存」

マンガ原画保存は、保存修復科の2年次に置かれた科目です。

授業では、漫画関係資料への「安定化処置」を題材に、処置方法の検討とその評価方法を中心に実作業を進めます。まだ方法論の定まっていない対象を扱うため、答えを教わるのではなく、学生と教員が一緒に考えていく時間になります。資料をどう扱い、どの処置が適切かを、一つひとつ検討していきます。

保存修復科は、被災したマンガ原画のレスキューや、原画の状態を可視化する取り組みにも関わってきました(川崎市市民ミュージアムの被災収蔵品修復の活動報告、マンガ原画の健康状態を可視化するシンポジウム)。

保存修復の対象が広がるということ

マンガ原画保存は、保存修復という世界がその対象を広げていることを示しています。

美術館や博物館の収蔵品だけでなく、古いお寺や神社、町の片隅の石碑、そして大量に遺されたマンガ原画まで。人の手当てを受けて遺されてきたものを、次の時代へ手渡していく。その対象の広がりのなかに、マンガ原画も含まれるようになりました。東洋美術学校はマンガやイラストの分野と保存修復の分野を併せ持つ学校であり、この新しい領域を学びの対象として扱っています。

机に並べた文書資料と修復道具

保存修復科で学べること

マンガ原画保存は、東洋美術学校 保存修復科で学ぶ分野の一つです。

保存修復科では4年間をかけて、油彩画・木製品・日本画・染織品・洋紙・文書など複数分野の修復と保存科学を学びます。マンガ原画保存を含む各分野の学びは、保存修復科の学科ページで紹介しています。カリキュラムや進路の方向性は、資料請求でより詳しく確認できます。

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